2023年3月〜4月の読書メモ

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読書メモ

あんまり読書に時間を割けなかった。やっぱり年度末/年度当初はバタバタしますね。2ヶ月分まとめて書く。

最高の体調 / 鈴木祐

同著者の「YOUR TIME」が気になっていたので、雰囲気を知るために Kindle Unlimited で流し読み。

「○○ するn%増加/減少した」という類の記述がどうも気になってしまった。もちろん、嘘が書いてあるとは思ってないのだが、この「割合 × 割合」は針小棒大に言うときに都合がいい表現なので、この表現がいっぱい出てくると素直に受け止められなくなる。

全体としては「論文キュレーション本」という感じで、バラバラの話題を羅列して背表紙を付けたような本だった。トピックとしていくつか興味深いものはあったけど、全体を通して導き出される筆者の主義主張みたいなものは感じられなかった。

私の興味の中心は内容というよりも著者の思考ロジックにあって、そこから自分の中の「void Main()」の改善に役立ちそうなものを取り込むのが読書の主要なモチベーションなので、その意味であまり楽しめなかった。私は著者が組み上げたロジックに対して「うんうんそうだよね」とか「そのりくつはおかしい」とか「賛同はできないが理屈はわからんでもない」とか、本を通して著者と擬似的に対話する体験がしたいのです。なので、そもそもこういうタイプの本とは相性が悪いのでしょう。客観的事実を並べ立てた本と相性が悪いというのも悲しいものだが。

この本を楽しく読めないのはなぜなのかという問いから、自分の読書観の一つを見出し言語化できたという点では有意義な読書だった。

内容に全く触れないのもアレなんで書いておくと、空気清浄機と観葉植物の導入を検討しようかなと思いました。あと、しばらく行けてない登山に行きたい。

エフォートレス思考 努力を最小化して成果を最大化する / グレッグ・マキューン

エッセンシャル思考から続けて読んだ。どうすればもっと楽にできるのかを考える、というマインドセットは重要だよね。物理本で買ったために読書期間が飛び飛びになってしまったので、あんまり頭に残ってないが、エッセンシャル思考のほうが刺激的で面白かった印象はある。エッセンシャル思考と一緒にもう一回読み直そうかな。

だがあるポイントで完了させないと、あとは手間ばかりかかって効果はほとんど得られない。修正にかかるコストが、それによって得られるリターンを上回ってしまうのだ(p.139)

  • メールの些細な言い回しを10分ぐらいこねくり回していることがたまにある。無駄な時間だとわかってはいるのだけど。

読書は、この世で最もレバレッジの高い活動だ。1 日の労働時間と同じ長さの投資(と数ドル)で、恐ろしく賢い人々の発見や知恵にアクセスできる。本をしっかりと読み、自分の血肉にすれば、他の何よりも累積的な成果が得られるだろう(p.215)

  • そう読めるようになりたい。

達人プログラマー(第 2 版): 熟達に向けたあなたの旅 / David Thomas 著、Andrew Hunt 著、村上 雅章 訳

まだ読み終わってない。あんまり急いで読むタイプの本じゃないので、ちょっとずつ読み進めているところ。プレーンテキストが最強のフォーマットなのは、Git を使い始めてから痛感してる。MarpPandoc といった素晴らしい変換ツールの存在もあり、最近自分が個人的に書くものはなるべく Markdown にしている。

そんなことをしていると、顧客向け Excel の文書を編集するたびに「なんでこんな面倒くさいことをしているのだ」と思うようになり、「今の手順まとめといて」と指示した部下が躊躇なく Excel を開いてるのを見て心底がっかりしてしまう。でもその手順書は私だけのものではないし、顧客は Excel を送ってくるし、「Excel をやめろ全部プレーンテキストにして Git で管理しろ Markdown にしろ」というのは弊社では先鋭的すぎる意見であり、Excel が最大公約数であることは間違いない。この環境下で間違っているのは私であり、狂人であることを悟られないために、仕方なく今日も Excel を起動するのである。

永遠を旅する者 ロストオデッセイ 千年の夢 / 重松 清

この本は何度目かわからないが再読(通読はしてない)。2007 年に Xbox360 で発売されたゲーム「ロストオデッセイ」の中で不定期に挿入されるビジュアルノベル形式の短編小説を書籍にしたもの。主人公のカイムは 1000 年間生き続ける不死者だが、本編開始時点では記憶をなくしており、彼がそれまでに体験した失われた記憶が「千年の夢」として語られる……という建て付け。

全体的に物悲しい雰囲気の話や、寓話めいた話が多いが、(ごく一部を除いて)どれも読後感がよく、つい読み返してしまう魅力がある。1 編読み終わるごとに、悲しいような、むなしいような、あったかいような、いとおしいような……そういう複雑な感情が喚起される。隙間時間にふと読みたくなる本なのだが、Kindle 版がないんだよね。文庫版を持ち歩くのも面倒なので、ぜひ Kindle 化してほしい。

あと、個人的には前書きに書いてある、坂口博信氏が重松氏に依頼したときのくだりが好き。以下引用。

『ロストオデッセイ』の制作総指揮をつとめる坂口博信さんは、ぼくに仕事をオファーするにあたって、細かい条件は何もつけなかった。

自由に書いてもらって構わない。ゲームのストーリーそのものとリンクさせる必要もない。それぞれの夢の長短も気にしないでいい。

ただひとつ、と坂口さんは言った。

「一千年を生きることの哀しみが感じられるようなものにしてほしい」

「千年の夢」はゲームプレイを強制的に中断して挿入されるので「ロストオデッセイ」というゲームの中でもかなり重要な位置づけだと思うんだけど、依頼にあたって背景設定と大まかな方向性の希望だけ説明して細かいディレクションはしない坂口氏も、それを受けて慣れない設定の中でこれだけの物語を書きあげた重松氏も、どちらもプロフェッショナルだなぁと感じさせられる。このエピソードも込みで好きな本。